
救えた邦人は、たった1人にとどまった。 イスラム主義組織タリバンが実権を掌握したアフガニスタンに、邦人と現地職員らの退避支援のために自衛隊が派遣された。だが、期待された成果を上げられずに撤収命令を受け、日本に引き揚げることになった。 自衛隊法によると、在外邦人らの輸送ができるのは、安全に実施できると認められる場合に限られている。 駐留米軍の撤退が完了し、現地の情勢は緊迫している。首都カブールの空港で輸送機運航のめどが立たず、活動が困難となった。 このため、撤収はやむを得ないともいえよう。 しかしアフガン国内には、即時出国を希望しなかった少数の邦人、出国を希望する日本大使館や国際協力機構(JICA)のアフガン人職員と、その家族ら計約500人が、まだ残っている。 職員らは、邦人の「ファミリー」とされている。撤収の前に、安全に退避させる手だてはなかったのだろうか。 タリバンが、カブールを制圧したのは先月15日である。 2日後には、日本人大使館員12人が、英軍機でアフガンを脱出した。危機的な状況は、分かっていたはずである。 それなのに、残る約500人の退避に向け、外務省が自衛隊派遣を防衛省に依頼したのは20日である。派遣命令が出たのは、23日だった。 安全に輸送できるかどうか確信が持てず、派遣をためらったとみられる。官邸の反応も、鈍かったようだ。 先月末とされた米軍の撤収期限が迫る中、自衛隊による退避の実行は26日に計画された。 ところがこの日、空港近くで自爆テロが起きた。カブール市内から、バスを連ねて出発した現地職員らは空港にたどり着けず、計画は空振りに終わってしまった。 派遣の決断が数日早ければ、退避は成功していたのではないか。同様に在留していた他国と比べ、活動の立ち上がりが遅かったとも指摘されている。残念でならない。 外務省は、在アフガン大使館の臨時事務所を、タリバンが政治部門の拠点を置く中東カタールのドーハに移転し、米国などと連携して、タリバンとの交渉に当たるという。 政府は、今回の自衛隊派遣がうまくいかなかった要因をきちんと踏まえたうえで、関係者の退避を完遂してもらいたい。
社説:自衛隊撤収 退避完遂できず残念だ(京都新聞) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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