
2014年にロシアが一方的に併合したウクライナ南部クリミア半島沖で23日、同海域を航行していたイギリスの駆逐艦を、ロシア軍機20機以上と沿岸警備隊の船2隻が追尾する出来事があった。 ロシア国防省は23日、クリミア半島沿岸から12マイル(約19キロ)の地点を航行していたイギリス海軍の駆逐艦「ディフェンダー」に対し、ロシアの巡視船が警告射撃を行い、ジェット機が爆弾を周辺に投下したと発表した。 イギリス政府はロシア側の説明を否定。警告射撃についても否定した。 イギリスの駆逐艦に同乗していたBBCのジョナサン・ビール防衛担当編集委員によると、ロシア軍から嫌がらせがあったという。 ジョージアに向けて黒海を航行中だった駆逐艦ディフェンダーの甲板でビール記者がリポートを撮影中、頭上に航空機の音が聞こえた。駆逐艦の乗組員が何らかの衝突の可能性に備える中、無線で敵対的な警告が発せられていたとビール氏は伝えた。 ビール記者によると、頭上には20機以上の航空機が飛び、ロシア沿岸警備隊の船2隻が駆逐艦からわずか100メートルの場所まで接近していたという。 ■英政府の説明 ところが、英首相官邸と英国防省の声明の内容は、この報告と食い違っている。 英防衛省は「ディフェンダーへの警告射撃はなかった。英海軍の艦船は国際法に基づき、ウクライナの領海を無害航行している」とツイートした。 また、「ロシア軍は黒海で砲撃演習を行っており、その活動について海事コミュニティーに事前に通達があったと認識している。ディフェンダーへの発砲の事実はなく、進路に爆弾が投下されたという主張も認められない」とした。 https://twitter.com/DefenceHQPress/status/1407672058524413957 英海軍のウェブサイトによると、駆逐艦は黒海で任務を遂行中という。 在ウクライナ英国大使館によると、駆逐艦は今週初め、ウクライナ南部オデッサ港に寄港。イギリスとウクライナは軍艦を共同で建造し、2つの海軍基地を建設することで合意しているという。 ■クリミア半島沖の航行の自由は 駆逐艦ディフェンダーはウクライナ南部オデッサからジョージアに向けて、クリミア半島の南側を航行していた。 ロシアは2014年にクリミア半島を一方的に併合したが、国際的には認められていない。 ロシア政府は、クリミア半島とその海域はロシアの領土であると主張している。イギリスは駆逐艦について、国際的に認められた一般的な航行ルートである、ウクライナの海域を通過していたとしている。 ある情報筋はBBCのジェイムズ・ランデール外交担当編集委員に対し、駆逐艦は争いをけしかけるためではなく、国際水域における航行の自由の権利を主張するために現場海域に来ていたと説明した。 ■「ロシア領海を侵した」 ロシア国防省は同海域に侵入した英駆逐艦の「危険行為」は国連海洋法条約に対する「重大な違反」行為であるとし、乗組員の調査を求めた。 在英ロシア大使館はその後、「駆逐艦ディフェンダー(守る人)がプロヴォケーター(工作員)になってロシアの領海を侵した。『日常的な』通過とは言えないだろう」とツイートした。 しかし英政府の報道官は、ロシアは黒海で「砲撃演習」を行っていると主張し、敵対行為について否定した。 ベン・ウォレス国防相は「ロシアの船舶はルーティンとして(英駆逐艦の)航行を追尾した。我々の船は周辺での訓練を認識していた」と付け加えた。 イギリスの駐ロシア大使はロシア外務省に召還され、23日午後に当局者と面会した。 ロシアは、今回の出来事は23日正午過ぎ、クリミア半島南部のフィオレント岬沖の黒海で起きたと発表した。 ロシア軍によると、ディフェンダーに進路変更を指示したが従わなかったため、ロシアの国境警備隊の船が数発の警告射撃を行った。その約10分後、ロシア軍のジェット機が駆逐艦の進路上に警告様の爆弾を投下したという。 この出来事は、2020年に日本海で、米海軍の駆逐艦ジョン・S・マケインが「航行の自由作戦」を遂行し、ロシアが駆逐艦が公海からロシア側に2キロ入ったと非難したときを彷彿(ほうふつ)とさせる。 ■<解説>駆逐艦ディフェンダーからの報告――ジョナサン・ビール防衛担当編集委員 私は黒海を航行中の駆逐艦に乗船している。 ロシアが一方的に併合したクリミア半島の南端に近づいた頃、乗組員はすでに戦闘配置についていた。英海軍の駆逐艦に搭載されている武器システムは発射準備が整っていた。 これはロシアに向けた意図的な行為だろう。ディフェンダーはクリミア半島から12マイル(約19キロ)の領海内を航行予定だった。船長は国際的に認められた航路を安全に航行するだけだと強調していた。 駆逐艦を追尾していたロシア沿岸警備隊の船2隻は強制的に進路を変更させようとした。そのうちの1隻が駆逐艦に約100メートルの距離まで接近する場面もあった。 無線では次第に敵意に満ちた警告が発せられるようになり、「進路を変えなければ発砲する」というものもあった。遠くで発砲音がしたが、自分たちは射程範囲から十分外れていると考えているようだった。 ロシアのジェット機は航行を続けるディフェンダーを威嚇した。ヴィンセント・オーウェン艦長によると、駆逐艦の近くで20機以上のロシア軍機を感知したという。オーウェン氏は任務には自信を持っているが、対立的なものではないとした。 (英語記事 Russian jets and ships shadow British warship)
(c) BBC News
ロシア軍、英駆逐艦を追尾 クリミア半島沖で(BBC News) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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